EPISODE 09 in 1993年〜2023年

毎年のご挨拶がつないだ
大切なお住まいの売却

今回のお話の始まりは30年以上前の平成初期、当社会長の父(現社長の祖父)が郵便局長をしている頃にいただいたご相談です。祖父の知り合いのお客様から「借地管理の手伝い」をご依頼されたことに遡ります。

借地とは、戦後の焼け野原だった時代に生まれた制度です。
家がない方々がとにかく家という器を手に入れるのに大変な時代でした。一方では、土地の所有者は戦後の荒廃の中では自分が所有する土地をしっかり管理することができず、土地を管理してくれる人を必要としていました。そんな需要と供給の中で、土地を借りて家を建てることができる「借地」という制度が始まったのです。

ご依頼をお受けして、丸三は借地の管理を始めました。
当社会長は年末に1軒、1軒、1年間の地代の集金に回るようになりました。当時の借地人(土地の借主)達は、戦後からその場所に、何十年という長い間、家を建てて住んでいる方々ばかり。当社会長は、初めはなかなか馴染めず苦労をしたそうです。
地代の集金の際に「今年も1年お世話になりました」という年に1回きりの何気ない挨拶を交わすだけの間柄ですが、年末の集金が丸三の恒例行事になるにつれて、借地人と当社との関係も少しずつ良好となっていきます。

特別な会話をしたわけでもないのですが、何年も続けた長い時間が、大変大きな信頼関係を築いていきます。いつからか、借地人の方々が年末に丸三が訪れるのを待っていてくれると感じるようになりました。
そうして、この長年のお付き合いを経る中で、借地人の方からは様々なご相談をいただけるようになりました。
「父親が亡くなってしまいました、相続の手続きはどうしたらよいですか?」
「借地を処分したいのですが、どうしたらよいですか?」
「もうすぐ借地期間が満了になりますが、どうしたらいいですか?」
「土地の所有者から、土地を購入することはできますか?」
「建物の内装工事をしたいのですが、相談に乗ってくれますか?」

このように、気軽にご相談いただける方が増え、集金以外でのお取り引きも少しずつ増えていきました。
特に相続のご相談となると、その親族の方々と相談をしなくてはいけません。その小さな小さな積み重ねの中で、相続人の方々との信頼関係も築かれていきます。
借地人のお父様、お母様が住んでいた家で世代交代があり、今では相続されたご家族が借地にお住まいになっているお客様もいらっしゃいます。世代が変わっても、毎年年末に集金に伺い続け、毎年「今年も1年お世話になりました」の挨拶をかわし、お付き合いを深めていきます。

そんな中、借地人の方から「私の親類が、自分の両親の家を売却したい」というご相談が舞い込みます。お話を伺うと、不動産の相続や売却は初めてなのでどこに相談したらよいか分からず困っていたといいます。毎年年末に実家に来てくれる不動産屋さんであれば、何十年という大変長い年月のお付き合いがあるので安心とのことでした。
売却したいという不動産は、長い年月を過ごした思い入れのある家財と、たくさんの思い出が詰まっておりました。そんな大切なお住まいを、相続の登記や家財の片付けから始め、無事次のお客様へと売却するという大きな役目を任せていただくことができました。

何十年も前にいただいた、借地管理を手伝ってほしいという些細なご相談がなければ、このようなご縁は生まれませんでした。これを読んでくださっている方も「そんなに長い付き合いはできない」と感じるかもしれませんが、ここに登場する方々も最初はそう思っておられたと思います。些細なことと思うようなご相談でも、ぜひお聞かせください。30年後に、ここでご紹介させていただけるような、大きなご縁になるかもしれません。