EPISODE 01 in 2009年4月
春の雨が起こした偶然が、
家族の物語を動かしはじめた。
相鉄線・三ツ境駅から徒歩1分。
丸三のある駅前の歩道は、それほど広くなく、行き交う人たちが譲り合いながら歩いています。
そんな光景が当たり前の日常となる中に、忘れることのできない雨の日がありました。
2009 年の春のとある日のことです。
朝からつづく雨の中、突然、会社の中にまで聞こえるほどの大きな音が響きます。
社内にいた社長の和田と会長が、様子を見に外へでると、一人のおばあさんが倒れていたのです。
「おばあさん、大丈夫!?」
慌てて駆け寄り、声をかけますが、おばあさんも気が動転している様子。
どうやら雨で濡れた道で足を滑らせてしまったようです。
「雨も降っているから、ひとまず中で休んでいってください」
幸い大きな怪我はありませんが、そのまま帰すには心配な状態。
そこで会長が車を運転し、おばあさんの自宅まで送り届けることにしました。
しかし、おばあさんは転んでしまったことが影響しているのか、すぐには自分の家の住所を思い出せません。
そこで会長は、周辺を車で回ることにしたのです。
「とりあえず、この辺りを走ってみましょう。もし思い出したら教えてくださいね」
約1時間後、おばあさんの暮らすマンションを見つけ、無事に部屋まで送り届けた会長が戻ってきました。
それからしばらくすると、助けたおばあさんの甥にあたる方が、丸三を訪れます。
「先ほど助けていただいたのは、私の叔母です。本当にありがとうございました」
丁寧にお礼を伝えに来てくださったのです。
「叔母は高齢になった今も、あのマンションに一人で暮らしているんです。近いうちに『私たち夫婦と一緒に住もうね』と話をしている矢先にこんなことが起きてしまって」
さらにその男性はつづけます。
「不動産屋さんの前で転んだのも、きっと何かの縁です。叔母のマンションの売却をお手伝いいただけますか?」
いきなりのご依頼に驚きながらも、詳しい内容をお聞きすることに。
おばあさんの住んでいたマンションは駅からも近く、窓からは富士山を眺められ、さらにとてもきれいな状態が保たれていました。
「このお部屋なら、きっとすぐに購入を希望される方がいらっしゃると思いますよ」
その言葉通り、数ヶ月の間に買い手が見つかり、無事に契約に至ったのでした。
それからは駅前で顔を合わせると互いに挨拶をしたり、たまにお電話もしたりするように。
さらに月日は流れ、マンションの売却から約8年が経ったある日のことです。
その男性から、1本の連絡が入ります。
「丸三さん、実は私の娘夫婦が地方に移住することになりました。それで私たちも一緒に移り住むことになったので、今度は自宅の売却をお願いします」
「そうなんですね。寂しくなりますが、お手伝いさせていただきます!」
その後も、おばあさんが暮らしていたマンションは、購入された方が賃貸として活用することとなり、丸三が管理を任されています。また、甥のご家族の一軒家も買い手が見つかり、今では別の家族の住まいになりました。
三ツ境駅前の通りに降った、春の雨。
いつもと変わらないはずだった1日の偶然のできごとが、長い年月をかけて、さまざまなご縁を紡いでくれています。